旅と食と糸と花

旅が好き、食べることが好き、こぎん刺しを嗜み、花を愛でる、でもどれに関しても無知な妙齢会社員の日記

【読書メモ】女の一生 一部・キクの場合

これまたオノヨーコ(仮名)の勧めで読了。
前回の「沈黙」よりは重くないけど、やっぱり明るさ、救いが全くない。
でもまあ、沈黙よりは時代や背景に対する抵抗は低かった。私的には。

新潮社HPより
長崎の商家へ奉公に出てきた浦上の農家の娘キク。活発で切れながの眼の美しい少女が想いを寄せた清吉は、信仰を禁じられていた基督教の信者だった……。激動の嵐が吹きあれる幕末から明治の長崎を舞台に、切支丹弾圧の史実にそいながら、信仰のために流刑になった若者にひたむきな想いを寄せる女の短くも清らかな一生を描き、キリスト教と日本の風土とのかかわりを鋭く追求する。

 

 

読み終えて、Amazonのレビューを見るとキクへの同情がめちゃくちゃ多くて賢い子だったのにみたいなものが見受けられてびっくりした。
彼女に対して私が一番思ったのは、教育って大事だなと。この時代の女性が教育を受けないことは当たり前のこととは言え、彼女に賢さを全く感じなかった。ただ、自分の欲望(恋愛)に忠実なだけじゃん???それが悪いとは言わないけど、家族や働き場所や周りの人々に対しての思いやりや感謝も感じないし、不幸になるべくしてなったような気もするんだよな。
この時代に生まれたことを可哀そうだなとは思ったけど、そこまでの同情は感じられなかったんだけどな…

そして信仰心、歴史、明治期…と改めて色々考えるきっかけとなった。
清吉ら切支丹が最後まで転ばなかった(棄教しなかった)のって、形は違えどイスラム教徒が自爆テロを起こすのと似てるのかなと。
五島屋の人達が「なんで棄てたら楽な生活できるのに、棄てないの」って言ってて、私だってそう思ったよ。
でも、ラストに悪役の伊藤が信者になってるって、強烈な皮肉であり、人間味であり、人間の真実でもあるし、読者にとってのカタルシスになるのかなと。いや、カタルシスにはならんか。
でもなんて言うか…伊藤って憎みきれない。人間の矮小な部分を濃く煮詰めた性格は、私自身にも見られる部分があって、あれを全部否定するのは自分や人間自体を否定するのと同じじゃないの。誰もがああなる要素はある。


誰も幸せになってないと思ったけど、辛うじて本藤舜太郎とお陽が幸せになってるか。

長崎に行ったら大浦天主堂は絶対見ないとあかんな。