旅と食と糸と花

旅が好き、食べることが好き、こぎん刺しを嗜み、花を愛でる、でもどれに関しても無知な妙齢会社員の日記

【読書メモ】台湾海峡一九四九 その1

先日読んだ台湾少女、洋裁に出会うが面白くて、同じ作者のものが読みたかったのだが、あいにく図書館にはなかった。
そして本当に読みたい本は翻訳されていなかったしね。

 

ということで、逆に翻訳者・天野 健太郎さんの本を探してみた。
彼は台湾、中国の大学で中国語を学んで台湾の本を何作か訳したんだけど、2018年に47歳で急逝してしまったそう。

私の大好きな通訳・米原万里さんも、翻訳や自分で小説を書き始めてすぐに亡くなってしまった。
どちらも、もっと読んでみたいのに…

 

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前置きが長くなってしまったけど。そういうわけで手にとったこちらの本。
いわゆる「外省人」と台湾で言われる人々が発生した「1949年」に焦点をあてている。
作者自身も外省人の子として高雄で生まれた。

見ての通りかなりボリュームで、中身も重いので読むのに時間がかかる。
なので、感想を2回に分けて書いておきたい。

私の中で中国共産党恐いというイメージは20歳くらいの頃に読んだ「ワイルド・スワン」で最初に形作られた。
あの本は清の時代から中華民国を経て中華人民共和国の女三代にわたる記録なわけだけど。

この本はつまり中華民国から中華人民共和国へ移る、いわゆる国共内戦を描いてるわけですよ。
国民党のやったこともえぐいが、この内戦で起こったことの良い側面のみのを喧伝している共産党にやっぱりゾッとする。
彼らにとって、内戦も文革もコロナも下々のものがどれだけ死のうが苦しもうが本当にどうでもいいことなのだ。と恐くなったけれど、これって中国だけかね?
今の日本が違うと言えるかね?そこには人間の持って生まれた業、性みたいなものもあるのではないかと思う。残虐性も含めて。

そして、台湾で「二・二八事件」や「白色テロ」が起こったことを考えると、国民党とは!!!と思うけど、この1949年に文字通り命からがら逃げてきた人、連れてこられた人を考えると、彼らもまた犠牲者だったのだと思う。
この本には国民党トップの人々は描かれていないので、トップの人々が「犠牲者」なのかは何とも言えないけど。

 

あと、言われてみれば…って感じなんだけど。台北には中国の地名が付いた通りや街がたくさんあるんですよね。
それの理由についても触れられていて、興味深かった。
そもそも上海も同じようになっているらしい。大昔に一度行ったきりなので、全然覚えてないけど。

街をそのまま中国に置き換えて、右上には東北、右下には東南といった具合に地名を使った通り名になっている。
成都路、貴陽路は西南つまり左下を、吉林路や遼寧路は右上。迪化街の迪化は今のウルムチを表している(wikiには旧称:迪化と書いてあった)

これは国民党が逃げてきた時に、ここを在りし日の中国と思って…ではなく。そもそも日本の植民地が終わった時に、中国らしさを取り戻そうということで上海をはじめとして台北にもこういった名前が付いたそうだ。

 

 

台湾海峡一九四九

台湾海峡一九四九

  • 作者:龍 應台
  • 発売日: 2012/06/22
  • メディア: ハードカバー
 

 

 

ワイルド・スワン 上下巻合本版

ワイルド・スワン 上下巻合本版